陸屋根(ろくやね・りくやね)とは、傾きがほとんど無い、平らな屋根のことです。鉄筋コンクリート造のビルやマンション、店舗の屋上の多くがこの形で、北海道では、雪を屋根から落とさない住宅の無落雪屋根(フラット屋根)も仲間に入ります。
平らな屋根は水が流れにくいので、屋根の全面を防水層で覆い、わずかな水勾配で水を排水口(ルーフドレン)に集めて流します。雨漏りは、平らな面の真ん中よりも、排水口のまわり、壁ぎわの立ち上がり、屋上のふちの壁(パラペット)と笠木、設備の架台や配管が貫く所から起きやすいものです。この記事では、陸屋根の作り、防水の種類、雨漏りの原因と点検、改修の時期、北海道の注意点を順に説明します。
陸屋根とは — 勾配屋根との違い、メリットとデメリット
- メリット — 屋上を、設備の置き場や点検・作業の場所として使える
- メリット — 形が単純で、三角の屋根のような屋根裏の空間が要らない
- メリット(北海道) — 雪を屋根の上に載せたまま処理できるので、隣の敷地や道路への落雪を防ぎやすい
- デメリット — 水が流れにくく、排水口が詰まると水が溜まる
- デメリット — 防水層が傷むと、そのまま雨漏りにつながる。定期的な点検と、防水の改修が欠かせない
三角の屋根(勾配屋根)は、瓦や板金などの屋根材を重ねて、傾きで水を流します。陸屋根は、傾きで流しきれない分を、継ぎ目の無い防水層で受け止める作りです。そのため、屋根材の種類よりも、防水層の状態と水の逃げ道が、雨漏りするかどうかを左右します。
陸屋根の作り — 水勾配・排水口・立ち上がり・パラペット
- 防水層 — 屋根の全面を覆う、水を通さない層。アスファルト、シート、ウレタンやFRPの塗膜など
- 水勾配 — 水を排水口へ流すためのわずかな傾き。住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準では、鉄筋コンクリート造の住宅の屋根の防水下地は1/50以上(保護コンクリートなどで表面の水が流れやすい場合は1/100以上)
- 排水口(ルーフドレン) — 屋根の水を集めて、縦の雨どいへ流す口。国の建築設計基準の資料は、できる限り2か所以上設けるとしている
- 立ち上がり — 防水層を壁ぎわで立ち上げた部分。同じ設計施工基準では、木造住宅の陸屋根やバルコニーで、窓などの開口部の下で120mm以上、それ以外で250mm以上立ち上げる
- パラペットと笠木 — 屋上のふちに立つ低い壁と、その上にかぶせる仕上げ。設計施工基準は、上端に金属製の笠木を付けるか防水材料を施すなど、雨水が入らないようにするとしている
1/50の勾配は、1m進んで2cm下がる傾きです。目で見て平らでも、水は排水口へ向かうように作られています。雨のあと、いつまでも乾かない水たまりがある所は、勾配の不良か、排水口の詰まりを疑います。
住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準は、新築住宅が保険に入るための技術的な基準として、国土交通省のページで公開されているものです。建物ごとの実際の作りは、設計図書で確かめてください。

陸屋根の防水の種類 — 露出防水と保護防水
- 露出防水 — 防水層がむき出しの状態。表面を仕上げの塗料(トップコート)で守る。防水層そのものを目で点検しやすい
- 保護防水 — 防水層の上をコンクリートなどで押さえる。上を歩いたり物を置いたりしやすい。保護コンクリートには、伸び縮みを逃がす伸縮目地を入れる
- アスファルト防水・改質アスファルトシート防水 — シートを重ねて張る。ビルやマンションの屋上で多い
- シート防水(塩化ビニル樹脂系・加硫ゴム系など) — 1枚のシートを張る。継ぎ目と端の納まりが要
- 塗膜防水(ウレタン・FRP) — 液体を塗り重ねて継ぎ目の無い膜を作る。形の複雑な所にもなじむ
国の公共建築工事標準仕様書(令和7年版)でも、屋根の防水は「屋根保護防水」と「屋根露出防水」に分けて工程が決められています。同じ陸屋根でも、どちらの作りかで、点検で見る所と改修のしかたが変わります。保護防水は防水層そのものが見えないので、伸縮目地や立ち上がり、排水口のまわりから状態を推し量ります。
種類ごとの特徴と耐用年数、いまの防水層に重ねるか撤去するかの考え方は『屋上防水の種類と耐用年数 — 改修工法(かぶせ・撤去)の選び方』でまとめています。
陸屋根の雨漏り — 水が入りやすい所
- 排水口(ルーフドレン)のまわり — 落ち葉や砂、ごみで詰まると水が溜まり、立ち上がりの高さを越えたり、防水層の継ぎ目から入ったりする
- 立ち上がりの端 — 防水層の端を押さえる金物やシールが傷むと、端から水が回り込む
- パラペットの上端と笠木 — 笠木の継ぎ目や、固定のビスの穴から入った水が、壁の中を下りてくる
- 設備の架台・配管・アンテナの足元 — 防水層を貫く所や、あとから載せた架台の固定部
- 保護コンクリートの伸縮目地 — 目地材が痩せたり抜けたりして、すき間から水や草が入る
- ふくれ・ひび割れ・はがれ — 防水層そのものの傷み。露出防水では目で見つけやすい
建築研究所の資料は、施工から10年以上たったFRP防水の例を見て、漏水に直結する防水層の切れや端のはがれは、材料の古さよりも、端や排水口まわりの納まりの不良によるものと推量しています。住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準も、排水口の取り付け部の防水層の補強や、防水層の無いパラペットや架台を配管が貫く所のシーリングを求めています。陸屋根の雨漏りを探すときは、平らな面より先に、端と排水口と貫通部を見てください。
陸屋根の下の部屋に出たしみは、真上から入った水とはかぎりません。水は防水層の下やコンクリートの継ぎ目を伝って、離れた所から出てくることがあります。入口の絞り込み方は『雨漏りが修理しても直らない原因 — 再発をくり返す建物の調べ方』で説明しています。防水層のふくれは『屋上防水のふくれの原因と補修 — 放っておいてよいか、直し方と費用』を参考にしてください。
北海道の陸屋根 — 無落雪屋根・すがもり・凍結
- 無落雪屋根 — 札幌市では、フラット屋根やM形屋根が新築住宅の7割を占め、すがもれや雨漏れのリスクが高いことが知られている(北方建築総合研究所の年報)
- すがもり — 融けた雪の水が凍り、その氷にせき止められた水が建物の中に入る。雨の日ではなく、雪の時期の晴れた日や暖かい日に漏れる
- 端部の凍結による傷み — 国の建築設計基準の資料は、寒冷地や多雪地では、屋根・庇・パラペットなどの端の凍結による傷みを防ぐことを考え、パラペットの上端には金属製の笠木を使うなどとしている
- 縦の雨どいの凍結 — 国の建築設計基準は、寒冷地の縦の雨どいは建物の中に設け、やむを得ず外に設けるなら凍結を防ぐ措置をとるとしている
- 冬は工事ができない — 国の公共建築工事標準仕様書は、雪が予想されるときや気温が著しく低いときは、防水の施工を行わないとしている
北海道の陸屋根では、雪が積もっている間は防水層も排水口も見えません。雪が降る前の秋に排水口のまわりの落ち葉を取り、雪どけのあとに水たまりと傷みを見る、という年2回の点検が、冬の雨漏りを減らす近道です。国の建築設計基準の資料も、まわりの環境によっては、落ち葉で排水口が詰まらない工夫をするよう求めています。
住宅の無落雪屋根に多いスノーダクト(M形屋根)の仕組みと点検は『無落雪屋根(スノーダクト)の雨漏り — 仕組み・デメリット・点検と清掃』、すがもりの原因と応急処置は『すがもり(すが漏り)とは?札幌の屋根で起きる原因・雨漏りとの違い・対策と応急処置』で詳しく書いています。

陸屋根の点検 — 自分で見られること、業者に任せること
- 自分で見られること(手すりがあり、安全に上がれる屋上だけ) — 排水口のごみや落ち葉、雨のあとに残る水たまり、表面のふくれ・ひび・はがれ、笠木や立ち上がりの浮き、草が生えている所
- 部屋の中から見られること — 最上階の天井や壁のしみ、窓まわりの濡れ
- 業者に任せること — 手すりの無い屋根に上がること、防水層の端や押さえ金物の状態、水をかけて入口を確かめること、保護コンクリートの下の状態
手すりの無い陸屋根に、はしごや脚立で上がるのは危険です。消費者庁は2014年、脚立やはしごからの転落事故の情報が437件寄せられ、事故の状況で多かったのは庭木の剪定と屋根の修繕だったと公表しています。屋根に上がる点検は、業者に頼んでください。
点検のときは、排水口のまわりと端の写真を、毎回同じ場所・同じ向きで撮っておくと、傷みの進み方が比べられます。
改修の時期と工法 — 国の記載例は12〜15年で補修、24〜30年で撤去・新設
- 露出防水 — 補修・修繕12〜15年(下地を整えて保護塗装=トップコート塗り)、撤去・新設24〜30年(記載例は改質アスファルト防水)
- 保護防水 — 補修・修繕12〜15年(伸縮目地の打ち替え、保護コンクリートの部分補修)、撤去・新設24〜30年(記載例はウレタン塗膜防水の通気緩衝工法)
- 庇・笠木・パラペットの天端 — 修繕12〜15年(高圧水洗のうえ下地を整え、ウレタン塗膜防水)
上は、国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインの記載例にある修繕周期と、想定している修繕方法です。どれも目安で、実際の時期は傷み具合で決めます。改修には、いまの防水層を残して重ねる工法と、撤去してやり直す工法があり、いまの防水層の種類と状態、下地の湿り具合で選びます。古い排水口には、改修用のドレンを差し込んで新しい防水層とつなぐ方法もあります。
工事は雪の無い時期に行います。着工したい時期から逆に数えて、点検と見積りを早めに済ませておくと、業者を比べる時間が残ります。費用の目安は『屋上防水の費用相場 — 工法別の平米単価と、見積書の見方』、マンションでの計画の立て方は『長期修繕計画の作り方と見直し — 国のガイドライン(令和6年改定)と北海道の建物』で説明しています。
陸屋根の雨漏りと火災保険
台風や大雪などの事故で屋根が壊れ、そこから水が入った場合は火災保険の対象になりうる一方、古くなって起きた雨漏りは対象になりません。たとえば東京海上日動の住まいの保険は、払わない主な場合に、屋根材のゆがみ・ずれ・浮き上がりなどによって生じた損害を挙げ、その屋根材に陸屋根の防水層も含めています。支払うかを決めるのは保険会社で、補償の範囲は契約によって違います。考え方は『雨漏りの修理に火災保険は使える?対象になる場合・ならない場合』にまとめています。

相談する前に確かめておくこと
- 建物の種類と階数、屋上の広さ(分かれば)
- 防水の種類(露出か保護か、分かれば材料)と、前回の改修の時期
- 漏れる場所と、漏れたときの天気(強い雨・風のある雨・雪どけ)
- 排水口のまわり、水たまり、立ち上がり・笠木の写真
- マンションなら、長期修繕計画と管理会社の連絡先
合同会社LIT(札幌市)では、陸屋根・屋上の防水工事と雨漏りの修理を、水の入口と下地の状態を確かめてから工法を決めてお引き受けしています。現地確認・お見積りは無料です。
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