屋上防水のふくれ(膨れ)は、防水層が下地から離れて、こぶのように盛り上がる症状です。主な原因は、下地のコンクリートや古い防水層に残った水分が日射で温められて水蒸気になり、こもった空気と一緒に膨らんで、逃げ場のないまま防水層を下から押し上げることです。晴れた日の昼に大きくなり、夜には小さくなります。
ふくれそのものは、すぐに雨漏りを起こすものではありません。ただ、伸ばされた部分は傷みが早く、破れればそこが水の入口になります。数が少なく小さければ部分補修、広い範囲に出ていれば、湿気の逃げ道をつくる脱気装置(脱気筒)や通気緩衝工法でのやり直しを考えます。
屋上防水のふくれとは — 浮きとの違い
ふくれは、防水層と下地の間にすき間ができ、その中の空気や水蒸気の圧力で盛り上がったものです。手で押すと少しへこみます。「水ぶくれ」「ボコボコ」と呼ばれるのも同じ症状です。
似たものに浮きがあります。盛り上がってはいないものの、防水層が下地にくっついておらず、踏むと動く状態です。国の研究機関の劣化の目安でも、ふくれと浮きはひとまとめに扱われています。
表面の塗装(トップコート)だけが浮いている場合と、防水層そのものが浮いている場合とでは、直し方が変わります。どの層が浮いているかを、まず見分けます。
ふくれの原因 — 下地の水分と、湿気の逃げ場がないこと
- 下地に残った水分 — コンクリートが十分に乾く前や、雨や雪のあとに施工した
- 古い層が含んでいた水 — 水を含んだ古い防水層や、押さえコンクリートの上から塗り重ねた
- 防水層の下に回った雨水 — 端のはがれ、排水口のまわり、ひび割れから入った水が、防水層の下にたまった
- 湿気の逃げ道がない工法 — 下地に直接くっつける密着工法は、湿気を逃がす通り道を持たない
千葉工業大学の研究(ウレタン塗膜防水の通気緩衝工法についての学位論文、2016年)は、夏の屋外で防水層の裏側の圧力を測り、温度が上がるのに合わせて圧力も上がることを確かめています。下地の裏側をふさいだ密着工法の試験体では、防水層の裏が54℃のときに最大8kPa(1㎡あたり約800kg分の力)になりました。下地と防水層の間に通気緩衝シートを入れた工法では、圧力の上昇はほとんど見られませんでした。
同じ研究は、既存の押さえコンクリートの上に直接ウレタンを塗る改修でとくにふくれが起きやすいとしています。押さえコンクリートの目地は動きやすく、水を多く含んでいることが多いためです。施工した日の天気や下地の乾き具合に左右されるので、ふくれを完全になくすのは難しい、ともしています。

防水の種類で、ふくれ方は違うか
- ウレタン塗膜防水(密着工法) — 下地に直接塗るため、下地の水分の影響を受けやすい
- ウレタン塗膜防水(通気緩衝工法) — 下に敷いたシートの通り道で湿気を広げ、脱気装置から外へ逃がす
- アスファルト系の絶縁工法 — 下地に全面ではくっつけず、脱気装置を付ける。札幌市の単価表でも、絶縁工法の値は脱気装置込み
- シート防水(塩ビ・ゴム) — シートの下に水や湿気がたまると、ふくれや浮きになる。継ぎ目のはがれもあわせて見る
- FRP防水 — 硬い膜。ベランダなど狭い場所に多い
ベランダの防水のふくれや、種類の見分け方は『ベランダ防水の種類と寿命 — トップコートの塗り替え・補修と費用』でも触れています。
ふくれは放っておいてよいか — 国の研究機関の目安
- ふくれ・浮きが面積の10%未満 — 今は様子を見てよいが、点検を続ける
- 10〜30% — 今は様子を見てよいが、早いうちにもう一度見てもらう
- 30%以上、または大きなふくれが1つでもある — 原則として、補修に向けて詳しく確かめる段階。大きさの区切りは、ウレタン塗膜防水で長い方の径300mm以上、FRP防水で直径1,000mm以上
上は、建築研究所の建築研究資料 第145号(2013年)が示した、露出防水の劣化の分け方(3段階)と、それぞれの判定です。特定の場所に偏って出ている場合は、その部分の中での割合で見ます。同じ資料は、防水層の端に近いふくれ・浮き上がりを、端の金物のゆるみやシールのはがれと並べて、端の傷みの一つに数えています。
先の研究は、ふくれは材料が変形しているだけで、それ自体がすぐ雨漏りを起こすものではないとしています。一方で、伸ばされた部分は劣化が早まり、昼に大きく夜に小さくなる動きをくり返すので、耐久性の面では望ましくないともしています。小さくても数が増えている場合や、端・排水口の近くにある場合は、早めに見てもらうほうが安心です。
放っておくと、何が起きるか
- 歩いたり物を置いたりしたとき、浮いた膜が傷つきやすい
- 破れると、そこから防水層の下へ雨水が入る
- 防水層の下に水が回ると、ふくれが増え、かぶせる改修が使えなくなることがある
- 冬は、入った水が凍って膨らみ、すき間を広げる
国の公共建築改修工事標準仕様書(令和7年版)でも、既存の防水層が劣化して水を含んでいる場合や、ふくれや浮きが全体にわたる場合は、そのまま進めずに扱いを協議することになっています。直す範囲が小さいうちのほうが、選べる方法が多く残ります。

ふくれの直し方 — 部分補修・脱気装置・通気緩衝工法
- 部分補修 — ふくれた部分を切り開くか切り取り、中を乾かし、下地を平らに直してから防水材を塗り重ね、まわりとつなぐ。数が少なく、下に水が回っていない場合
- 脱気装置(脱気筒)を付ける — こもった湿気の出口をつくる。下に敷いた通気緩衝シートなどの空気の通り道とセットで働く
- 通気緩衝工法でかぶせ直す — 古い層の傷んだ所を直したうえで、通気緩衝シートを張り、脱気装置を付けてウレタンを塗る。ふくれが広い範囲に出ている場合
- 撤去してやり直す — 古い層が水を含んでいる、ふくれや浮きが全体にわたる場合
同じ仕様書では、古い塗膜防水の上からウレタンで改修する工法の場合、古い防水層の破れや穴のあいた所の浮き・ふくれは切り取り、ポリマーセメントモルタルで平らに補修してから進めることになっています。
脱気装置の種類と数は、同じ仕様書では設計の指定により、指定が無ければ材料メーカーの仕様によるとされています。先の研究は、屋上のどこからでも脱気装置までの距離が離れすぎないことが大事だと示しています。かぶせるか撤去するかの考え方は『屋上防水の種類と耐用年数 — 改修工法(かぶせ・撤去)の選び方』で説明しています。
自分で穴をあけて空気を抜いてよいか
ふくれに針やカッターで穴をあけると、その場では平らになります。ただ、その穴は自分で防水層に開けた水の入口です。湿気の出どころは残るので、また膨らみます。上からコーキング(シーリング材)でふさぐのも一時しのぎで、次の工事で取り除く手間が増えることがあります。
屋上に上がること自体も危険です。手すりの無い屋上の端には近づかないでください。場所と大きさ、増えているかどうかを写真で記録しておくのが、自分でできるいちばん役に立つことです。
ふくれの補修にかかる費用
- 通気緩衝工法でやり直す(札幌市の単価) — 1㎡あたり新設9,370〜10,450円/押さえコンクリートの上にかぶせる改修8,660〜11,400円(令和8年度、材料と手間込み、足場と経費は別、税の記載なし)
- 通気緩衝工法でやり直す(施工会社の公開価格) — 1㎡あたり4,500〜11,000円(8社、全国の例)
- 既存の防水層の撤去 — 1㎡あたり750〜2,800円(5社)
- 下地調整 — 1㎡あたり600〜1,000円(3社)
- 改修用ドレン(排水口) — 1か所10,000〜20,000円(5社)
- トップコートの塗り直し — 1㎡あたり900〜1,650円(4社)
施工会社の価格は、別々の会社の公開価格の最小〜最大です(2026年10月に確認。税込と税の記載なしが混在)。
ふくれ1か所あたりの部分補修の値段と、脱気装置1か所の値段は、同じ物差しで比べられる公開価格がそろわなかったため、書いていません。部分補修は、ふくれの数と大きさ、中が濡れているか、屋上までの上がり方で変わるので、現地を見た見積りで確かめてください。
見積書では、ふくれの数と大きさをどう数えたか、切り開いて中が濡れていた場合の扱いを確かめます。ほかにかかる費用の全体は『屋上防水の費用相場 — 工法別の平米単価と、見積書の見方』にまとめています。

ふくれを繰り返さないために — 北海道で気をつけること
国の改修の仕様書では、雨や雪が予想されるとき、下地の乾燥が不十分なとき、気温が著しく低いときは、防水の施工を行わないことになっています。北海道では、雪解けのあとしばらく、下地のコンクリートや古い層が水を含んでいることがあります。急いで塗ると、その水を閉じ込めることになります。
かぶせる改修で古い層の水分が心配なときは、通気緩衝工法を選ぶ、脱気装置の数と位置を確かめる、下地が乾く時期に工事を合わせる、の3つで備えます。
相談する前に確かめておくこと
- ふくれの場所・数・大きさがわかる写真(物差しを添えると伝わりやすい)
- いつ気づいたか、増えているか
- 前回の防水工事の時期と工法
- 室内の漏れやしみの有無
- 屋上への上がり方
当社では、屋上・ベランダの防水と雨漏りの修理を承っています。ふくれの状態と下地を確かめてから直し方を決めます。現地確認・お見積りは無料です。
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