マンションの大規模修繕の費用は、国土交通省が令和3年度に行ったマンションの大規模修繕工事の実態の集計(全国の完了した工事818件)で、1戸あたりの中央値が1回目110.2万円、2回目106.1万円、3回目以上97.0万円です。延床面積1㎡あたりの中央値は、1回目1.1万円、2回目1.3万円、3回目以上1.2万円。1戸あたりの金額で最も多い帯は100万〜125万円(全体の27.0%)でした。どれも消費税と共通仮設費(現場事務所などの費用)を含まない金額で、全国の値です。北海道だけの値は公表されていません。
この集計のあとも、工事費は上がっています。国の公共工事設計労務単価は14年続けて上がり、北海道の防水工は2026年3月から前の年より6.7%高くなりました。この記事では、費用の幅と内訳、修繕積立金、費用が上がっている理由、見積書で確かめることを説明します。工事の流れと何年ごとに行うかは、『大規模修繕の流れと周期 — 何年ごとに、着工前に何を決めるか』にまとめています。
大規模修繕の費用はいくらか — 1回目・2回目・3回目以上の目安
- 1戸あたり(中央値) — 1回目110.2万円、2回目106.1万円、3回目以上97.0万円
- 1戸あたり(真ん中の半分が入る幅) — 1回目90.9万〜134.0万円、2回目87.8万〜129.8万円、3回目以上76.8万〜125.7万円
- 1戸あたり(平均) — 1回目151.6万円、2回目112.4万円、3回目以上106.1万円
- 延床面積1㎡あたり(中央値) — 1回目1.1万円、2回目1.3万円、3回目以上1.2万円。最も多い帯は1.0万〜1.5万円(33.4%)
- 1戸あたりで多い金額の帯 — 100万〜125万円(27.0%)、75万〜100万円(24.7%)、125万〜150万円(17.4%)の順
- 工事1件の金額(中央値) — 1回目8,665万円、2回目7,660万円、3回目以上8,703万円
上の数字は、国土交通省が令和3年(2021年)7〜10月に、大規模修繕の設計や施工を受けた会社から集めた、完了済みの工事の金額です(200社・818件、税抜)。金額には、工事そのものの費用(直接工事費)と、現場管理費・一般管理費・法定福利費などの諸経費、大規模修繕の瑕疵保険の保険料が入っています。
平均が中央値より高いのは、金額の大きい一部の工事が平均を引き上げているためです。比べるときは、中央値と「真ん中の半分が入る幅」を物差しにすると、極端な例に引きずられません。
何回目かは、築年数の見当にもなります。同じ集計では、1回目は築15年以下、2回目は築26〜30年、3回目は築41年以上で行われた割合が最も高くなっています。築30年前後のマンションなら、2回目の金額が参考になります。
国の修繕積立金のガイドラインによると、規模が大きく工事の量がまとまるほど単価は下がり、形の入り組んだ建物や超高層の建物は足場などが高くなる傾向があります。
何に費用がかかるか — 工事費の内訳
- 建築の工事 — 60.3%(外壁、防水、シーリング、鉄部の塗装、建具など)
- 仮設工事 — 22.8%(足場など)
- 諸経費 — 10.3%(現場管理費・一般管理費・法定福利費など9.5%、瑕疵保険の保険料0.8%)
- その他の工事 — 3.8%
- 設備の工事 — 1.6%
- 外構・付属施設 — 1.3%
上は、同じ集計の総工事金額に対する割合です。建築の工事だけを100として中身を見ると、外壁塗装24.5%、床防水(バルコニーや廊下)18.6%、屋根防水13.4%、外壁タイル12.9%、シーリング12.0%、鉄部などの塗装7.4%、建具・金物など7.4%、共用部分の内装3.7%です。外壁まわり(塗装・タイル・シーリング)で約半分、防水で約3割を占めます。
足場などの仮設が2割強を占めるのが、大規模修繕の費用の特徴です。仮設の割合は1回目25.3%、2回目22.3%、3回目以上19.4%と、回を重ねるほど下がります。代わりに増えるのが建具・金物などで、建築の工事に占める割合は1回目の1.9%から、3回目以上では15.3%になります。
「共通仮設費を含まない」という点は、見積書と比べるときに大事です。国の長期修繕計画作成ガイドラインでは、仮設工事を、足場などの直接仮設と、現場事務所や資材置き場などの共通仮設に分けています。この集計の金額に足場は入っていますが、共通仮設は入っていません。
タイル張りの建物では、タイルの浮きを補修する量が、足場を組んで近くで確かめるまで決まりません。定期報告との関係は『外壁タイルの浮きと全面打診 — 定期報告で10年ごとに求められること』で説明しています。屋上防水の1㎡あたりの単価は、『屋上防水の費用相場 — 工法別の平米単価と、見積書の見方』にまとめています。

修繕積立金の目安と、実際の平均
- 20階未満・延床5,000㎡未満 — 335円(235〜430円)
- 20階未満・延床5,000〜1万㎡ — 252円(170〜320円)
- 20階未満・延床1万〜2万㎡ — 271円(200〜330円)
- 20階未満・延床2万㎡以上 — 255円(190〜325円)
- 20階以上 — 338円(240〜410円)
- 機械式駐車場がある場合 — 1台あたり月4,645〜7,210円(機種による)に台数を掛け、総専有面積で割った額を足す
上は、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年6月改定)が示す目安で、専有面積1㎡・1か月あたりの金額です。長期修繕計画の期間全体で積み立てる額を月あたりにならした平均で、( )内は事例の3分の2が入る幅です。ガイドラインは、この幅に入っていないからといって、すぐに不適切とは言えないとも書いています。
たとえば専有面積70㎡の住戸に当てはめると、月およそ1万7,600円〜2万3,700円です(252円〜338円で計算。機械式駐車場の分は別)。
一方、国土交通省が令和5年度に行ったマンションの管理の実態の集計では、1戸あたりの修繕積立金の月額の平均は13,054円(駐車場の使用料などからの繰り入れを含めると13,378円)でした。同じ集計で、長期修繕計画を定めて積み立てている管理組合のうち、残高が計画に対して足りていないと答えたのは36.6%、足りていると答えたのは39.9%、分からないが23.5%です。
目安は計画期間全体の平均、実際の額は段階的に上げていく途中の額も含むいまの月額なので、そのままは比べられません。ガイドラインは、最初を低くして段階的に上げる方式では引き上げの合意ができずに不足する例があるとして、同じ額を積み続ける均等積立方式が望ましいとしています。長期修繕計画は5年程度ごとに見直します。
修繕積立金が足りないときの選択肢 — 一時金・借入れ・工事の見直し
- 一時金を集める — 工事の年に、足りない分を区分所有者から一度に集めます
- 借り入れる — 管理組合として金融機関から借り、修繕積立金から返していきます
- 工事の範囲と時期を見直す — 診断の結果で急がない部位を次の回に回し、今回の工事を絞ります
- 修繕積立金を上げる — 長期修繕計画を見直し、次の工事に向けて積立額を引き上げます
国の長期修繕計画作成ガイドラインは、大規模修繕の年に積立金の累計が工事費の累計を一時的に下回るときは、一時金の負担や借入れなどの対応が必要だとしています。想定外の工事や物価の上昇に備えて、計画に「予備費」を入れておく方法も示しています。
借入れの例として、独立行政法人住宅金融支援機構に、管理組合が借り手になる「マンション共用部分リフォーム融資」があります。2026年10月に機構のページで確かめた主な条件は、総会で工事と借入れを決めていること、毎月の返済額が毎月の修繕積立金の80%以内であることなどで、返済期間は原則1〜10年です。金利と最新の条件は機構のページで確かめてください。
どれも総会で決めることです。一時金は1戸あたりの負担が一度に大きくなり、借入れは返済の分だけ将来の積立金から出ていきます。範囲を絞ると、残した部位は次の回に回ります。時期を遅らせすぎると、傷みが進んでかえって費用が増えることもあります。
国が進めているマンションの管理計画の認定でも、長期修繕計画で将来の一時金の徴収を予定していないことや、計画期間の最後の年に借入金の残高がないことが基準に入っています。一時金や借入れは、積立金の見直しとあわせて考えてください。
大規模修繕の費用が高くなっている理由 — 労務単価・資材・人手不足
- 職人の賃金(労務単価) — 国の公共工事設計労務単価は14年続けて上がり、2026年3月からの全国・全職種の平均は25,834円で、初めて2万5,000円を超えた
- 北海道の主な3職種 — 防水工33,300円(前年31,200円から+6.7%)、塗装工30,100円(29,000円から+3.8%)、とび工30,000円(28,600円から+4.9%)。どれも1人8時間あたりで、会社の経費は含まない
- 工事費全体(労務と資材) — 国土交通省の建設工事費デフレーターで、建物の補修(改装・改修)は2020年度を100として2025年度(暫定)123.0
- 人手不足 — 建設業で働く人は1997年の685万人から2023年は483万人に。55歳以上が36.6%、29歳以下は11.6%
- 働き方のルール — 2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限(原則 月45時間・年360時間)が適用
国の修繕積立金のガイドラインは、大規模修繕の主な職種として、とび工(足場)、防水工(防水・シーリング)、塗装工の3つを挙げています。そのうえで、材料費や足場の部材のリース費には地域差がほとんどない一方、労務費には地域差があり、担い手不足や働く環境の変化で上がる可能性があるので、必要に応じて上昇分を考えに入れるよう求めています。
国土交通省は2026年2月の発表で、この労務単価を、公共工事・民間工事を問わず確保されるべき労務費の計算の基礎になる水準と位置づけています。
建設工事費デフレーターは、労務費と資材などの値動きを、工事に使う割合で重ね合わせて作る指数です。建物の補修の指数は、5年で2割あまり上がりました。最初に挙げた1戸あたりの金額は2021年に集めた完了済みの工事なので、その後の値上がりは入っていません。いま見積りを取ると、この集計の金額より高く出ても不思議ではありません。
なお、前回の平成29年度の集計(1戸あたりで多い帯は75万〜100万円)は諸経費を含まない金額なので、令和3年度の集計と並べて上がり幅を読み取ることはできません。

北海道・札幌で費用を見るときの注意
国の集計は全国の値で、地域ごとの集計はありません。札幌や北海道に絞った大規模修繕の1戸あたりの金額で、公的に公表されたものは見つかりませんでした。職人の賃金には地域差があり、防水工の労務単価は北海道33,300円、東京都38,200円です(2026年3月から)。全国の値は大まかな物差しにとどめ、建物ごとの見積りで確かめてください。
ガイドラインは、寒冷地では劣化の進み方や必要な修繕の内容が変わり、工事費に影響する場合があるとも書いています。北海道では、外壁の塗装や防水を雪のない時期に進めるのが基本です。工事をしたい季節から逆に数えて、診断と見積りを前の年のうちに進めておくと、施工会社を比べる時間が残ります。
見積書で確かめること
- 税と共通仮設費 — 消費税と、現場事務所などの共通仮設費が入っているか。国の集計の金額には、どちらも入っていない
- 足場の範囲と期間 — 全面に組むか一部か、何か月建てておくか
- 数量の決め方 — 下地の補修やタイルの浮きなど、足場を組むまで決まらない項目を、想定の数量で入れているか、実際の数量で精算するか。1か所・1㎡あたりの単価が書いてあるか
- 諸経費の中身 — 現場管理費・一般管理費・法定福利費(会社負担の社会保険料)、瑕疵保険の保険料
- 予備費 — 想定外の工事に備えた金額を見込んでいるか
- 工事項目ごとの内訳 — 外壁・防水・シーリング・鉄部・建具を分けて書いているか
2〜3社に、同じ工事項目と数量で見積りを頼み、項目ごとに並べて比べてください。総額だけを比べると、抜けている項目のある見積りが安く見えます。国土交通省は、法定福利費を内訳に示した見積書を参考に、その分を適切に含んだ額で契約するよう、管理組合に呼びかけています。
設計コンサルタントに設計や施工会社選びの支援を頼む「設計・監理方式」では、コンサルタントが中立であることが前提です。2026年9月には、関東地方の大規模修繕工事で、施工会社と設計コンサルタントが受注する会社を前もって決めていたなどとして、公正取引委員会が独占禁止法にもとづく排除措置命令を出しました。相談先として国土交通省は、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」(見積りを無料で確かめるサービスあり)と、マンション管理センターを案内しています。
相談する前に確かめておくこと
- 長期修繕計画(いつ、どの工事に、いくら見込んでいるか)と、最後に見直した年
- 修繕積立金の残高、毎月の積立額、積み立ての方式
- 前回の大規模修繕の時期・範囲・金額
- 外壁がタイル張りか塗装か、機械式駐車場があるか
- 住んでいる方から出ている不具合(雨漏り・ひび割れ・錆など)
分かる範囲で構いません。当社は、マンション・ビルの管理会社様向けに、警備・防水工事・雨漏り対応・サイネージを同じ窓口でお受けし、大規模修繕の前の現状の把握と、直す順番のご提案もしています。現地確認・お見積りは無料です。
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