エレベーターの床の下には、ピットと呼ばれる空間があります。建物のなかでいちばん低い場所です。そのため、どこから入った水でも、最後はここに集まります。
エレベーターピットとは、どんな場所か
エレベーターのかごが上下する縦の通り道を昇降路といいます。その一番下、最下階の床よりさらに低く掘り下げてある部分がピットです。
ピットには、かごや、かごと反対向きに動くおもりが、万一下まで行き過ぎたときに受け止める緩衝器や、安全のためのスイッチ類が置かれています。点検のとき以外に人が入る場所ではなく、ふだんは乗り場の扉の奥に隠れていて見えません。
地面より低く、建物でいちばん低く、ふだん誰も見ない場所。この3つがそろっているため、水が溜まっても気づくのが遅れやすいのがピットの特徴です。
水は、真上から落ちてくるとは限らない
ピットに水が溜まっているとき、真上の天井から漏れているケースは多くありません。地下の外壁から染みてきた水、配管まわりの隙間を伝ってきた水、地下水位が上がって押し上げられた水。入口はたいてい別の場所です。
そのため、ピットの底を塗り直すだけでは止まりません。翌年、同じ時期にまた溜まります。

放っておくと、何が起きるか
- 鉄部が錆びる(ガイドレール、ボルト、基礎まわり)
- 湿気がこもり、においとカビが上の階まで上がる
- 制御に関わる部品に届くと、安全装置が働いて停止する
水位が上がると、ピットの中にある部品に届きます。緩衝器、配線、ピット内のスイッチ類。ここに水が入ると、エレベーターは安全側に倒れて止まります。
止まってから直すと、工事の費用だけでなく、その間エレベーターが使えない影響が出ます。マンションであれば上階の方の生活に、テナントビルであれば営業に直接ひびきます。
ピットの水抜きで、気をつけること
水が見つかると、まず「抜いてしまえばいい」と考えます。水を抜くこと自体は必要ですが、ピットに自分で入って抜くのはやめてください。昇降路の中はかごやおもりが動く場所で、エレベーターを安全な状態にしてから入る手順が決まっています。水抜きは、エレベーターの保守会社に相談して行います。
もうひとつ大事なのは、抜く前に記録を残すことです。水の深さ、色、にごり、においを写真と一緒に残しておくと、入口を探す手がかりになります。澄んだ水か、泥の混じった水か、錆の色がついた水かで、疑う場所が変わるためです。
ピットに排水の設備がない建物もあり、溜まった水は抜かない限り減りません。そして入口が残っていれば、抜いてもまた溜まります。水抜きは応急の手当てで、止めるには入口をふさぐ工事が要ります。
保守会社と、水を止める工事は、担当が分かれる
エレベーターの保守会社は、エレベーターの機械を点検し、直す会社です。点検のときにピットの水を見つけて知らせてくれることはありますが、建物に入ってくる水を止める工事は、ふつうは担当の外になります。
そのため、「保守会社には伝えたのに、水は毎年溜まる」ということが起こります。機械の側の手当て(濡れた部品の点検や交換)と、建物の側の手当て(水の入口をふさぐ工事)の両方がそろって、はじめて止まります。
地下の外壁や床から入る水の考え方は、屋上からの雨漏りと共通するところが多く、コラム『「直したのに、また漏れる」が起きる仕組み』でも説明しています。

先にやるのは、入口を探すこと
当社では、まず水の入口と通り道を確かめます。溜まっている場所ではなく、入っている場所を特定してから工事を組み立てます。
見えている出口だけをふさぐと、水は別の弱いところへ回ります。出てくる場所が変わるだけで、量は変わりません。
よくいただくご質問
- Q. エレベーターで水の音がします。関係ありますか — 昇降路の壁を水が伝っているか、ピットに水が溜まっていることがあります。まず保守会社に見てもらい、あわせて、音がしたのが雨や雪解けのあとかどうかを書き留めておいてください
- Q. ピットの底を防水の材料で塗れば止まりますか — 水が入ってくる側からの圧力で、塗った膜が浮いてくることがあります。入口と通り道を確かめてから、工法を選びます
- Q. 雨が降っていないのに溜まります — 地下水や、近くの配管からの漏れを疑います。雨との関係がないことも、大事な手がかりになります
ほかの場所の漏れと同じく、溜まる時期と量の記録がいちばんの近道です。
水位を見ておくだけでも違う
すぐに工事ができない場合でも、いつ・どれくらい溜まるかを記録しておくと、原因の絞り込みが早くなります。雨のあとだけなのか、雪解けの時期だけなのか、年中なのかで、疑う場所が変わります。
現地の確認とお見積りは無料です。写真だけでも状況はお聞きできますので、まずはご相談ください。











