鉄部の塗装は、見た目を整えるためのものではありません。鉄に水と空気を触れさせないための膜です。膜が切れた瞬間から、錆は進み始めます。
表面の錆のうちは、塗り替えで済む
浮いた古い塗膜と錆を落とし、錆止めを塗って、上塗りをかける。この段階なら、手間は掛かりますが工事としては素直です。
落とし方が甘いまま上から塗ると、下で錆が進み続けます。下地をどこまで落とすかが、持ちの大半を決めます。
断面が減り始めると、別の工事になる
錆が進むと、鉄そのものが薄くなります。手で押して動く、叩くと軽い音がする、穴が開いている。ここまで来ると塗装では戻りません。
溶接での継ぎ足しや、部材の交換が必要になります。足場が要るかどうかも変わってくるので、費用の桁が変わることがあります。

北海道で、先に傷む場所
- 外階段の段板と、その裏側
- 手すりの付け根(コンクリートに刺さっている部分)
- 扉の下端と、枠の下の隅
- 屋上の設備架台の脚
融雪剤がかかる場所は、ほかより速く進みます。外階段の下段、車が通る出入口の鉄板、除雪機が当たる位置。
また、雪が溜まったまま春まで乾かない場所は、長い時間ずっと濡れていることになります。屋根の下や風下側は要注意です。
見るのは、上からより下から
外階段は、上から見ると普通でも、裏から見ると錆が広がっていることがよくあります。水は下に回るからです。
点検のときは、しゃがんで下から見てください。それだけで、次にやる工事の順番が変わることがあります。
見積書で確かめたい、塗り替えの中身
- 下地処理(ケレン)の程度 — 錆をどこまで落とすのか。手の道具だけか、電動の道具も使うのか
- 錆止めの種類と回数 — 鉄に直接触れる層です。何を何回塗るのか
- 上塗りの回数 — 回数で、膜の厚みが変わります
- 範囲 — 表側だけか、段板の裏や手すりの付け根まで含むのか
同じ「鉄部塗装」という名前でも、この4つで中身が大きく変わります。とくに裏側と付け根は、見積りの範囲から外れやすい場所です。錆は下や裏から進むので、ここが入っているかどうかで持ちが変わります。
塗り替えのたびに、どの部分をいつ塗ったかを記録しておくと、次の時期の見当がつき、傷みの早い場所も分かってきます。

塗り替えに向く天気、向かない天気
塗料は、雨の日や、鉄の表面が濡れているときには塗れません。気温が低い日や湿度が高い日も、乾きが遅く、膜がきちんとできないことがあります。
北海道では、朝晩の冷え込みで鉄の表面に結露が出る時期があります。日中は晴れていても、鉄が濡れていないかを確かめてから塗ります。屋外の鉄部の塗り替えを雪のない時期にまとめるのは、このためです。
塗ったあとも、乾くまでの間に雨や夜露に当たると、表面がむらになったり、膜が弱くなったりします。天気の変わりやすい時期は、塗る時間を日中の乾きやすい時間に寄せます。
錆は、ほかの傷みの入口にもなる
手すりの付け根で錆びた鉄は、膨らみながらまわりのコンクリートを押し割ります。割れたところから水が入り、今度はコンクリートの中の鉄筋が錆び始めます。
錆を見つけたら、こすって落とす前に写真を撮っておいてください。次に見たとき、進んでいるかどうかを比べられます。
外壁に茶色の筋が出ていたら、表から見えない鉄が錆びているサインです。外壁の側から見た見分け方は、コラム「外壁のひび割れ、どこからが工事なのか」で説明しています。寒冷地で傷みが進みやすい理由は「北海道の建物が傷む本当の理由 — 凍結と融解のくり返し」にまとめています。
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