地下の漏水の多くは、土の中の水(地下水)が、コンクリートの弱い所から押し入ることで起きます。入口になりやすいのは、ひび割れ、コンクリートを打ち継いだ継ぎ目、型枠を留めた金物の跡、配管が壁や床を通る所です。地下水のほかに、地上から流れ込む雨水や雪解け水、配管からの漏れ、そして結露でも、地下の壁や床は濡れます。
建ったあとの建物では、外側から防水をやり直すのは大がかりになるため、止水工事は主に内側から行います。水が出ているひびや継ぎ目に止水材を注入する方法と、コンクリートにしみ込ませる塗布防水を組み合わせるのが基本です。この記事では、原因の見分け方、止水の方法、費用の手がかりを順に説明します。
地下の漏水の主な原因 — 水はどこから入るか
- ひび割れ — コンクリートが乾いて縮むときや、地震などでできた割れ目。細くても、水の圧力がかかると染み出す
- 打継ぎ(うちつぎ) — コンクリートを何回かに分けて流し込んだときの継ぎ目。床と壁の境目に多い
- 型枠を留めた金物の跡 — 壁のコンクリートを流すときに型枠を締め付けた金物の端の穴
- 豆板(ジャンカ) — コンクリートが行き渡らず、砂利が見えてすき間が残った所
- 配管・電線の貫通部 — 壁や床を配管が通る所のすき間
- 地上からの雨水・雪解け水 — 出入口、車路(スロープ)、通気口、地上の植え込みから入る
- 結露 — 湿った空気が、地中で冷えた壁や床に触れて水滴になる
日本建設業連合会(日建連)は、屋根や外壁、地下外壁、水槽などから雨水や地下水が漏れる経路として、ひび割れ、打ち継ぎのすき間、豆板などを挙げています。地下の壁や床は、外側から地下水に押されています。地上の外壁なら雨がやめば止まる漏れも、地下では水の圧力がかかり続けるので、一年中、少しずつ染み出し続けることがあります。
型枠の金物の跡について、国の公共建築工事標準仕様書(令和7年版)は、直接土に接する面や防水の下地ではコーン(円すい形の部品)を使い、型枠を外したあとにコーンを取り外して、保水剤や防水剤入りのモルタルを詰めるなどの措置をとるよう定めています。こうした所の処理が足りないと、地下水の通り道になります。
地下室・地下ピット・地下駐車場で、それぞれ多いこと
- 地下室 — 外壁や床の打継ぎ、ひび割れからの染み出し。夏に壁が広く濡れるなら結露も疑う
- 地下ピット(湧水槽・機械室の下・エレベーターピットなど) — 建物でいちばん低いので、どこから入った水も集まる
- 地下駐車場 — 天井(上が広場や植え込み)からの漏れ、車路の出入口から流れ込む雨水、冬は車が持ち込む雪の融け水
地下駐車場の床が濡れていても、漏水とは限りません。冬の札幌では、車に付いた雪が融けて床に水たまりができます。その水には道路の融雪剤(凍結防止剤)が混じっていることがあり、コンクリートや鉄部の傷みを早めることがあります。融雪剤と凍結による傷みは『凍害とは?外壁・コンクリートの症状と対策 — 北海道の建物が傷む理由』で説明しています。
エレベーターピットは、水が届くとエレベーターが止まるので、ほかの地下の漏水とは急ぎ方が違います。原因と対策、水抜きの注意は『エレベーターピットに水が溜まる原因と対策 — 浸水・水抜き・止水工事』にまとめています。

原因の見分け方 — いつ、どこに、どんな水が出るか
- 雨と関係なく、一年中じわじわ出る — 地下水を疑う
- 大雨や雪解けのあとに増える — 地上からの流れ込みを疑う。地下水が増えて押す力が強まることもある
- 夏の蒸し暑い日に、壁や天井の広い範囲がうっすら濡れる — 結露を疑う。冬に減るなら、その見込みが強い
- 水を使う時間帯に出る — 上の階や近くの配管の漏れを疑う
- ひびや継ぎ目に沿って白い筋や白い垂れがある — 水がコンクリートの中を通り、成分を表面に運んで固まった跡
結露なら、止水工事では止まりません。換気や除湿で湿気を減らす、冷える面を断熱する、という別の手当てになります。逆に、地下水の染み出しを結露と思い込んで除湿だけを続けると、ひびや継ぎ目からの漏れは進みます。
見分けるには、濡れる場所と時期の記録がいちばん役に立ちます。濡れている所に印を付けて日付と写真を残し、雨の日、晴れが続いた日、季節ごとに比べてください。
止水の方法1 — 注入で、水の出ているひびと継ぎ目を止める
- 無機系 — 超微粒子セメント、高炉スラグの超微粒子など。固まったあとの硬さ(弾性係数)はコンクリートと同じ程度とされ、ひび割れの動きにはほとんど追従しない
- 有機系 — ポリウレタン樹脂(水になじむ親水性のもの・水をはじく疎水性のもの)、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂など
日建連は、コンクリートのひび割れや打ち継ぎのすき間、豆板などの漏水経路に注入して漏水を止める材料を「注入止水剤(材)」とまとめ、メーカーへのアンケートから上のような種類を挙げています。同じ資料は、止水の性能を比べる統一された公的な試験方法は無く、各メーカーが独自の方法で性能を示している、とも書いています。材料は、ひび割れの幅、水の量と勢い、ひび割れが動くかどうかで選びます。
注入は、ひびや継ぎ目に沿って注入口を付け、材料を送り込んで、水の通り道を中から埋める方法です。1か所を止めると、水が近くの弱い所へ回ることがあるため、止めたあとも周りを見ながら進めます。
止水の方法2 — ケイ酸質系塗布防水で、面から染み出す水を減らす
ケイ酸質系塗布防水は、コンクリートの表面に塗ると、成分がコンクリートの細かいすき間にしみ込み、コンクリートの中の成分と反応して水に溶けない結晶をつくり、すき間を埋める防水です(日建連がまとめたメーカー各社の資料より)。表面に膜を張るのではなく、コンクリートそのものを水が通りにくくする考え方です。
国の公共建築工事標準仕様書(令和7年版)にも、9章6節「ケイ酸質系塗布防水」として載っています。材料は日本建築学会の規格(JASS 8 M-301)に合うものとし、塗る面を水で湿らせてから2回に分けて塗ること、コンクリートの打継ぎ部には幅・深さ30mmほどの溝をつくってポリマーセメントモルタルを詰めること、型枠の金物のコーンの跡もポリマーセメントモルタルで埋めることなどが決められています。
塗布防水が受け持つのは、面全体から染み出す水です。勢いよく水が出ているひびや継ぎ目は、先に注入で止めてから塗るのが順番です。なお日建連の資料では、浸透型の防水材の耐用年数は、メーカーの回答で5年から30年までばらつきが大きいとされています。

外防水と内防水の違い — 建ったあとは内側からになる
- 外防水 — 地下の外壁の、土に接する外側に防水層をつくる。水を建物の外で受け止める。建てるときに、土を埋め戻す前に行う
- 内防水 — 地下の壁や床の、室内側に防水をする。建ったあとの改修や、ピットの中の手当てで使う
国の公共建築工事標準仕様書(令和7年版)は、ゴムアスファルト系の塗膜防水のうち「Y−1」を地下外壁の防水に使う種別とし、防水層を保護するため、厚さ5mm以上の保護緩衝材(補強クロス付きのポリエチレン発泡材)を使うことにしています。外防水は、このように建てるときに外側から施工するものです。
建ったあとに外防水をやり直すには、建物のまわりを掘り返す必要があります。隣の建物や道路が迫る街なかでは、大がかりな工事になります。そのため改修では、内側からの止水と防水が中心になります。
内側に膜を張る防水は、コンクリートの向こうから押してくる水の圧力を、膜がはがれる向きに受けます。地下水の圧力がかかる面で、コンクリートにしみ込ませるケイ酸質系の塗布防水や、注入による止水を組み合わせるのは、このためです。
地下の止水工事の費用 — 単価の例と、上下する理由
- ひび割れ補修の単価(札幌市の公共工事) — エポキシ樹脂の注入 1mあたり5,480〜6,390円、溝を彫ってシーリング材を詰めるUカット 1mあたり2,480〜3,040円
- エレベーターピットの止水工事(業者の公開価格) — 1基・一式 およそ20万〜300万円(4社。全国の例で、北海道の会社は見つからなかった。各社の下限は20万〜50万円)
- 手間の値段の目安(国の労務単価・北海道) — 1人1日(8時間)防水工33,300円、はつり工31,400円、左官30,900円(職人に払う賃金で、会社の経費は含まない)
札幌市の単価は「令和8年度 建築工事設計資材単価表」(2026年4月)の値で、材料と手間を含み、足場や現場の管理費、会社の経費は含みません。税の記載はありません。ただしこれは、ひび割れを樹脂で埋める補修の単価です。水が出ている所を止める止水の注入は、水の量や注入する材料の量で手間が変わり、同じ値にはなりません。エレベーターピットの値は、各社の公開価格を2026年10月に比べた幅で、税の記載はありません。
幅が大きいのは、止める範囲で工事の大きさが変わるためです。費用を上下させるのは、漏れている所の数と長さ、水の量と圧力、作業場所の広さと出入りのしやすさ、エレベーターや駐車場を止められる時間、水抜き・乾燥・仕上げの手間です。
見積もりを比べるときは、どのひびや継ぎ目を何mずつ止めるのか、塗布防水を何㎡かけるのか、止まらなかったときに追加で止めてもらえるのか(保証の範囲と期間)を確かめてください。
排水ポンプと下水道 — 止めるまでのあいだの備え
地下に水を集める槽(湧水槽)とポンプがある建物では、ポンプが止まると水があふれます。停電や故障、詰まりに備えて、ポンプの点検の記録と、異常の警報が誰に届くかを確かめておきます。ポンプは出てきた水を外へ出す道具で、入ってくる水は止めません。
札幌市は、地下水など水道水以外の水を公共下水道に流す場合も、量に応じた下水道使用料がかかるとしています。建物の地下で湧いた水をポンプで下水道へ流している場合の扱いは、札幌市下水道河川局に確かめてください。

地下の漏水は誰が直すか
マンションでは、地下の外壁や床のコンクリート(躯体)は共用部分で、直すのは管理組合の側になるのが基本です。部屋を借りている場合は、まず貸主か管理会社に知らせます。専有部分と共用部分の分け方は『マンションの漏水・上の階からの水漏れ — 原因の見分け方と、誰が直すか』で説明しています。
建ってから間もない建物で地下の漏水が起きたときは、まず建てた会社に連絡し、契約書と保証書で、何を何年保証しているかを確かめます。
相談する前に確かめておくこと
- 濡れる場所(壁・床・天井・ピット)と、印を付けた写真
- いつ濡れるか(一年中か、雨や雪解けのあとか、夏の蒸し暑い日か)
- 水の量(1日にバケツ何杯か、ポンプが動く回数など)と、色やにおい
- 建物の図面、前に止水や防水をした記録(あれば)
- エレベーターや駐車設備の保守会社から受けた報告
記録があると、注入で止める所と、塗布防水をかける面を、現地で絞り込みやすくなります。
合同会社LIT(札幌市)では、雨漏り・漏水の修理を、水の入口の特定から止水工事まで承っています。現地確認・お見積りは無料です。
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