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公開 保全工事

つらら・雪庇・落雪の対策 — 建物の持ち主の責任と、事故を防ぐ方法

屋根のつらら、軒先に張り出す雪庇(せっぴ)、屋根から滑り落ちる雪は、下を通る人や止めてある車に当たると大きな事故になります。被害が出たときは、建物の持ち主や管理する人が、損害賠償の責任を問われることがあります。民法717条は、建物などの設置や保存に欠陥があって他人に損害を与えたとき、占有者や所有者が賠償すると定めています。

対策は3つに分けて考えます。つらら・雪庇をできにくくすること(断熱・換気、屋根の部材)、落ちても人に当たらないようにすること(雪止め、軒下を通路や駐車場にしない、近寄れないようにする)、できたら早めに取り除くこと(高い所は業者に頼む)です。この記事では、仕組み、事故の傾向、責任と保険、冬の前の準備を順に説明します。

つらら・雪庇・落雪ができる仕組み

  • つらら — 暖房の熱が屋根に伝わって雪の下側が融け、その水が冷えた軒先で凍ってできる。北総研は、つららやすがもれなど屋根の雪の障害の多くは、融けた水が再び凍ることで起きるとしている
  • 雪庇 — 風に運ばれた雪が屋根の風下側に吹きだまり、軒先から庇のように張り出す。北総研の研究では、風下側の吹きだまりと、積もった雪がゆっくり垂れ下がる動き(クリープ)が雪庇を大きくするとされている
  • 落雪 — 勾配のある屋根に積もった雪が、気温が上がったときなどに、まとまって滑り落ちる
  • 壁・窓枠・看板・庇の雪と氷 — ビルの外壁の出っ張りに付いた雪や氷が落ちる

雪庇は、雪を屋根に載せたままにする無落雪屋根や、ビルの平らな屋上で、風下側にできやすくなります。北海道立総合研究機構 北方建築総合研究所(北総研)の資料は、札幌では北西からの風による吹雪が多く、その風下の南東側の屋根の端に雪庇ができる例が多いとしています。無落雪屋根の手入れは、コラム『無落雪屋根(スノーダクト)の雨漏り — 仕組み・デメリット・点検と清掃』で書いています。

雪を落とす屋根でも、雪が長く載ったままになると、つららや巻きだれ(軒先から垂れ下がる雪)ができやすくなります(北総研)。フラット屋根では、雪と屋根の間にできた氷の板が、春先に気温が上がったときに落ちる危険も指摘されています。つららが屋根の水漏れにつながる仕組みは、コラム『すがもり(すが漏り)とは?原因・雨漏りとの違い・対策と応急処置』で説明しています。

落雪・つららの事故はどれくらい起きているか

内閣府が消防庁の情報をもとにまとめた資料では、2025〜2026年の冬(2026年5月時点)に雪で亡くなった人は全国で72人、そのうち落雪による死者は5人でした。前の冬(2024〜2025年)は、68人のうち13人が落雪によるものです。どちらの冬も、落雪で亡くなった人のほとんどが65歳以上でした。

北海道では2025〜2026年の冬、雪による死者が10人、けが人が165人(重傷34人・軽傷131人)でした。この数には除雪作業中の事故が含まれ、交通事故と転倒は含まれていません。死者の原因の内訳は全国の数しか出ていないため、北海道で落雪による被害が何人かは、この資料からは分かりません。

北海道は、例年、屋根の雪下ろし中や落氷雪などによる死傷事故が多く起きているとして、屋根の下を通るときは雪やつららに注意するよう呼びかけています。札幌市も、毎年冬になると沿道の建物などからの落氷雪による死傷事故が多く起きているとしています。国土交通省の「雪下ろし安全10箇条」は、屋根に積もって時間がたった雪は氷のように固くなり、直撃すると非常に危険だと注意しています。

落ちやすいのは、気温が上がる日です。岩見沢市の広報は、屋根に積もった雪は気温がマイナス3度以上のときに落ちやすくなるとしています。雪のあとに晴れて暖かくなった日や春先は、軒下に近づかないことが基本です。

雪の歩道に並べたコーンと、立ち入りを止めるロープ

落雪・つららの事故の責任は誰にあるか — 民法717条

民法717条は、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたとき」は、まずその工作物の占有者(実際に使い、管理している人)が賠償の責任を負い、占有者が損害を防ぐのに必要な注意をしていたときは所有者が賠償しなければならない、と定めています。瑕疵(かし)は、欠陥や不備のことです。建物も、ここでいう土地の工作物に含まれます。

条文には、所有者が注意をしていたことで責任を免れる、という定めはありません。また、民法709条は、故意や過失で他人の権利を侵害した人が賠償の責任を負うと定めています。屋根の雪やつららを放っておいて人や車に被害が出たとき、これらの条文にもとづいて、持ち主や管理する人の責任が問われることがあります。

自治体や研究機関も、同じ考え方で注意を呼びかけています。岩見沢市の広報は、屋根の雪が落ちて歩行者や車に損害を与えた場合は、建物の所有者が責任を負うことになるとしています。北総研の資料も、落雪が隣の家に入るトラブルや人身事故では、建築の専門家だけでなく住まい手も責任を問われるとしています。

実際に責任があるかどうか、どれだけ賠償するかは、建物の状態や管理のしかた、事故の状況によって個別に判断されます。賃貸の住宅やテナントの入ったビルでは、借りている人が占有者にあたる場合もあります。冬の雪の処理を誰がするかは、契約や管理の取り決めで先に確かめておいてください。

建物の持ち主に求められていること — 法令と札幌市のルール

  • 建築基準法第8条 — 建物の所有者・管理者・占有者は、建物を常に法令に合った状態に保つよう努める。北海道は、雪による建物の倒壊の防止を呼びかける中でこの条文を挙げている
  • 札幌市建築基準法施行条例第12条 — 道路や隣地との境界に近い建物で、氷や雪が落ちて他に危害を与えるおそれがあるときは、雪止めの設置などの有効な措置をとらなければならない
  • 道路に雪を出さない — 札幌市は、冬のルール・マナーの根拠となる法令として、道路法第43条、道路交通法第76条、北海道公安委員会の道路交通法施行細則第19条を挙げている
  • 空き家も対象 — 空家等対策の推進に関する特別措置法第5条は、空き家の所有者や管理者に、周りの生活環境に悪影響を与えないよう適切に管理する努力を求めている

札幌市は、条例第12条の有効な措置として、軒先から敷地の境界まで十分な距離をとること、屋根に雪止め金具を有効に設けること、落雪を防ぐ機能のある屋根材を使うことなどを示しています。そのうえで、建築確認で措置を確かめても、氷や雪が落ちないと約束するものではなく、新たに危険が分かった場合はあらためて措置が必要だとしています。

札幌市・北海道・北海道開発局・北海道警察の連名の「屋根からの落氷雪事故防止などのお願い」は、落氷雪のおそれがある沿道の建物には雪止めを付けること、すでにある雪止めも、針金の傷みなどで落氷雪が起きることがあるため毎年雪の前に点検すること、ビルの壁や窓枠、突き出た看板からの落氷雪は少量でも危険なので、付いた雪や氷を早めに取り除くことを求めています。

落雪・つららの事故に備える保険

  • ビル・店舗・賃貸の建物の持ち主や管理会社 — 施設賠償責任保険(施設所有(管理)者賠償責任保険)。日本損害保険協会は、所有・使用・管理している施設の欠陥などで法律上の損害賠償責任を負った場合の損害を補償する保険と説明している
  • マンションの管理組合 — マンション向けの保険の特約。たとえば東京海上日動のマンション総合保険の「建物管理賠償責任補償特約」は、共用部分に起因する偶然な事故で他人にけがをさせたり物を壊したりして、法律上の賠償責任を負った場合を対象にしている
  • 戸建て住宅 — 火災保険などに付ける個人賠償責任の特約。東京海上日動の説明では、日常生活や住宅の管理不備などで他人にけがをさせたり、他人の物を壊したりしたときの法律上の損害賠償責任を補償する

どれも、保険金が支払われるのは、持ち主や管理する人が法律上の賠償責任を負う場合です。責任がないと判断されれば、賠償の保険は使えません。支払うかどうかを決めるのは保険会社で、保険の名前や補償の範囲は、会社・商品・契約の時期によって違います。手元の保険証券と約款で、特約が付いているか、建物のどの部分が対象かを確かめてください。

自分の建物の被害(雪の重みで壊れた屋根やといなど)は、賠償の保険ではなく、火災保険の雪災の補償で見ることになります。

夕暮れの中層マンションの外観

つらら・雪庇・落雪を防ぐ対策

  • 断熱と換気 — 北総研は、つららやすがもれを防ぐコツを「暖房熱を屋根面に伝えないこと」としている。天井や屋根の断熱、天井裏の換気が基本
  • 雪止め — 屋根の雪が一度に滑り落ちないよう止める金具。効く範囲は積雪量と屋根の勾配で変わるため、メーカーや板金の専門業者と確かめる(北総研)
  • 雪庇を防ぐ部材 — パラペット(屋根の外周の立ち上がり)の上にかぶせる雪庇防止の笠木や、屋根の端に立てる柵がある。北総研の研究では、雪庇防止の笠木は屋根の上の雪が多いと効果が出ない場合もあるとされている
  • 融雪ヒーター — 軒先やとい、排水口に電気のヒーターを付け、氷を作らないようにする。電源の工事と、冬のあいだの電気代がかかる
  • 軒下を人と車の通り道にしない — 北総研は、雪庇ができる方角に駐車場や玄関があるときは、カーポートや小屋根を設けるよう示している
  • 近寄れないようにする — 落ちるおそれのある軒下を、コーンやロープで区切り、注意の表示を出す

どれか1つで足りるわけではありません。つららの元は熱、雪庇の元は風、落雪の元は屋根の勾配と気温なので、建物ごとに、何が、どこに、どの方角にできるかを先に確かめてから組み合わせます。屋根から落ちた雪がどこまで届くかも、屋根の高さや勾配で変わります。北総研の資料は、雪を落とす屋根では軒下に落ちた雪を置く場所が要るとして、その広さが足りるかを設計のときに確かめるよう示しています。

対策の工事の費用は、屋根の形と広さ、建物の高さ(足場や高所作業車が要るか)、電源の工事の有無、今の屋根材との取り合いで決まります。

できてしまったつらら・雪庇はどう取り除くか

高い所のつららや雪庇は、自分で屋根に上って落とさないでください。北海道は、屋根の雪下ろしをするときは複数で行い、命綱を付け、靴やはしごに滑り止めを付け、下の通行人に注意するよう呼びかけています。晴れの日ほど屋根の雪がゆるんでいて危ない、とも書いています。

地上から届く低い所のつららを落とすときも、下に人や車がいないことを確かめ、周りをロープなどで区切ってから作業します。岩見沢市の広報は、つららなどを落とすときは十分に注意して専用の雪庇落としなどを使うこと、高い所からの落氷雪は少量でも危険なので早めに業者に頼むことを呼びかけています。

雪や氷が落ちたら、先の「お願い」のとおり、すぐに事故がないか確かめ、歩行者と車の通行の妨げにならないよう片付けます。敷地の雪や屋根から落ちた雪を、道路に出してはいけません。

管理会社・ビルの持ち主が冬の前にやること

  • 前の冬に、つらら・雪庇・落雪が出た場所を写真で残し、見回る場所を決める(雪庇は風下側に出やすい)
  • 雪止め・看板・庇・外壁の出っ張りの固定と傷みを点検する
  • とい・排水口・ルーフドレン(屋上の排水口)を掃除し、ヒーターがあれば動くか確かめる
  • 軒下の駐車場・駐輪場・出入口・通路を見直し、冬だけ使わない区画や回り道を決める
  • 雪下ろし・つらら落とし・排雪を頼む業者と、頼む目安・連絡のしかたを決めておく
  • 入居者やテナントとの分担(誰が、どこを見るか)と、注意の知らせ方を決める
  • 施設賠償などの保険の内容を確かめる
  • 空き家や空き区画も、見回りに入れる

冬のあいだは、雪のあとに晴れて気温が上がる日が、見回りの目安になります。落ちる前に気付けるよう、どこを誰が見るかを決めておくことが、事故を防ぐ基本です。

合同会社LIT(札幌市)では、つららのできる屋根で起きやすいすがもりや雨漏りの修理を、水の入口の特定から止水工事まで承っています。現地確認・お見積りは無料です。

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